見渡す限り誰もいない、広い、広い、人工的で無機質な空間に、ただ一人きり、
そよいでいた夏の風も止み、作業の手をおくと一切の音さえしません。
遠くから響き聞こえてきた音に見上げると、山に囲まれ、丸くぽっかりと広がる
雲ひとつない青空に、ジェット旅客機のその機体色が判明するほど大きく鮮明に
ゆっくりと横切って行きました。
流れる汗をタオルで拭い、再びだた一人きり、屋外での作業を続けます。
・・・ときにこうした、ちょっとめまいを誘うような空間に突如、放り込まれる
ことがあるのですが、記憶に残る初めてのそれは、オートバイに乗り始めた頃の
16~17歳、近隣の市町村でさえ自分自身の意思で行けることが嬉しく、地図も
持たずに走り回っていた、加西市の農道かどこだったか、夕暮れ迫れど、一向に
その道から抜け出せず、異次元を感じた出来事。
はたまた秋田県の、車の通り一切ない山の中の立派な道の大きなトンネル、何も
考えずスッと進入したのですが、内部の照明も無く、行けど行けど延々と続いて
オートバイが正立しているのか、自分自身のバランスさえあやしくなってきて。
草深い山道を歩いていたら、急に開けた空間に出て、ツルに覆われ土に還ろうと
している巨大廃墟に偶然出会ったような、そんな突然、別の世界に放り込まれる
異次元体験を過去に、二度、三度程度しているのですが、昨日のそれは、理屈で
別世界で無いことは分かっているのですが・・・ 異次元でした。
惑星ソラリス、決死圏SOS宇宙船、ウルトラセブンの第何話かのような・・・
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