岐路を行く

 

 

季節は進み、明るい中での起床だったのが、1時間経ってもまだ暗い昨日、今日

どんよりと低い雲が垂れ込めた空に、ゆっくりと朝が広がって行きます。

 

オートバイで走るならば、秋晴れの空に越したことは無いのですが、重く湿った

空気は、見知らぬ土地での出発の朝の不安に似て、旅ごころをくすぐる。

 

雨粒が落ちてくる前にパッキングを済ませた旅人に、レインウェアを装着べきか

否かの判断を求めてくる曇った空は、見守ってくれるのか、試練を与えるのか。

 

昔、長距離フェリーの船上の人だったワタクシは、朝方の暗い中で接岸する港を

どちらへ向かうのか、走り出す方向を天気予報で決めてエンジンを掛けました。

 

山の朝も早い。

 

午前3時頃からの朝食を済ませ、まだ暖かさの残るシュラフをコンプレッション

ベルトで締め上げ、ザックにテントを仕舞えば、しっかりルートを確認しながら

暗い中を歩き始めます。

 

驚くような速度で流れゆく雲を眼下に、天気図をアタマの中に思い浮かべながら

山地図を睨めて、停滞する場合も想定しながらの山行。

 

そう、悪天候は各種色々な判断を、脅迫するかの如く強く求めてくるその緊張感

それは人生に置き換えてもそうなのでしょう。

 

それを知識と経験、めぐらせた知恵、そして、ほんの少しの勇気で、自分自身を

適切な方向へと導いて行かねばなりません。

 

 

Copyright (C) 2000~ 平瀬謹也 All Rights Reserved.

 

 

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